いつかは想像を超える日が待っているのだろう

何かを変えるには、何かアクションを起こさなくてはならない。

2012年4月、僕は大学2年生だった。彼女はいなかったが、大学生らしい毎日を過ごしていた。
2012年4月、僕は好きな人がいた。片思いしていた。どうにかこの気持ちを前進させたかった。

2012年5月、僕は失恋をした。告白をしたがフラれてしまった。
2012年5月、僕は大学に行くことが面倒くさくなってしまった。失恋したくらいで、情けないやつだ。

2012年6月、僕はこのままでいちゃいけないと思った。失恋を引きずる情けない自分を変えたかった。
2012年6月、僕は決心をした。よく晴れた木曜日、僕はバイクに飛び乗り大学へ向かわず茨城県へ走った。

何かを変えたくて夢中で行動したあの21歳の一日を今でも忘れたくなくて、ここに記事として残す。

 

大学に行きたくない。大学へ行って顔を合わせたくない。梅雨も近づいてきてなんだか蒸し暑いし、講義なんて友達に代わりに出席をとってもらってしまえばなんとかなる。もう以前ほど毎日が輝いていない。友達との約束も適当で、飲み会があれば行くし、なければ行かない。フラれてからというもの毎日の色が変わった。

このままじゃいけないなと思いながら退屈な日々を過ごしていた。ある日、大学の情報室で課題をしているとき、大好きなバンド「くるり」がライブツアーを開催していることを知った。僕はすぐにチケットをとろうと思った。奇跡的に、木曜日のライブのチケットがとれた。木曜日は講義があるがそんなことは関係ない。今ライブに行かないでいつ行くんだ。僕の本能がそう言っていた。

ライブ当日の木曜日、雲一つない青空。さすが晴れ男だ。バイクに飛び乗り、すぐに茨城県を目指した。ライブは夕方からだが、昼前には家を出た。茨城県まではそこそこ距離がある。フラれた女の子のことを考え黄昏れるにはじゅうぶんな時間だ。

彼女とデートした時「一緒にくるりのライブへ行こうね」と言われた。彼女とデートした時「いつか大きなバイクに乗せてね」と言われた。彼女とデートした時「いつか旅行しようね」と言われた。全部叶わなかった。だから、全部一人で叶えるのだ。

目的地のライブ会場、水戸ライトハウスについた。くるりを求めて既に行列ができていた。僕は近くのスーパーで買ったなっとう味のうまい棒を食べながら列に並んだ。「まさか神奈川県からメンヘラって水戸までくるやつなんていないっしょw」と1年前の僕ならそう言うだろう。だが僕はここにいる。

ライブが始まってからは圧巻だった。その時何をどう感じたかなんて到底文字だけじゃ表せない。けれどもあの場にいた僕は、一所懸命に歌う岸田さんと対峙して、どうしようもないほどの心を動かされたということだけは確かだ。

「ばらの花」が聞きたかった。くるりの曲の中で一番好きな曲。邦楽ロックで一番好きな曲。ありとあらゆる感情が詰まった曲。二人が大好きだった曲。とても大切な曲。

「ばらの花」の前奏が流れた瞬間前が見えなくなってしまった。本気で、ライブで、涙をながすやつなんているのかと思っていた自分がどこかにいたが、ここにいた。ライブで感極まって涙を流す自分が、神奈川からバイクでわざわざ水戸までやってきて感情を抑えきれなくなる自分がここにいた。

ここに来てよかったと思った。この心地よいイントロがばらの花だと、それに気づいた瞬間、全てが昇華した。本当に、身体が軽くなったような思いをした。

人を好きになると心が苦しくなると最初に言った人は天才だ。全くもってその通りだ。本当に好きになってしまうと彼女の一挙手一投足全てが気になって仕方がない。他のことが手に付かない。フラれてからもそれは完全に自分を縛っていたんだ。知らず知らずのうちに、いや、知ってはいたし気づいてもいた。まだ好きだったから、心が重くなっていたのだ。

そこからはひたすらくるりの奏でる音楽に身を任せた。あっという間の5分間だった。「ばらの花」が終わってからっぽになった僕の身体に「HOW TO GO」の前奏が流れ込んできた。
「昨日の今日からは一味二味違うんだぜ」と岸田さんは歌い出した。この曲は自分のためにあるのかと錯覚した。
「いつかは想像を超える日が待っているのだろう」このフレーズをあのライブハウスで、至近距離で聞いた衝撃は今でも覚えている。ばらの花からのHOW TO GO。一生忘れることのないプレイリストだ。

ライブが終わって外に出ると6月と言えど冷えていた。僕はふわふわしたような、それでもスッキリした表情をしていただろう、バイクに飛び乗り、水戸の街とくるりに感謝して神奈川へ帰った。来る2012年の夏にわくわくしながら。

一生忘れることのない思い出を手に入れたのは僕が行動したからだ。フラれたのも自分、水戸まで行ったのも自分、水戸で何かを感じたのも自分、全て自分が行動した故の今日の思い出だ。悲しい思い出も、嬉しい思い出も、行動した故だ。これからも何か壁にぶつかったら、とにかく行動しようと思う。行動すれば、なんとかなる。あの日の自分に、ありがとうと言いたい。

 

タイトルはくるり “HOW TO GO”
「いつかは僕達も離ればなれになるのだろう
僕達は毎日守れない約束ばかりして朝になる」
こんな風に岸田さんは歌う けれど
いつかは想像を超える日が待っているんだよな

くるり ありがとう